ファンマーケティングとは?顧客のファン化を促す手法・事例を紹介
マーケティング戦略において、自社の商品・ブランドの価値観に共感して、愛着を持ってくれるファンをつくることは、長期にわたって安定した売上を確保していくための重要な課題の一つです。
特に近年では、SNSや口コミサイトなどで情報収集をしてから商品購入の意思決定を行う消費者も増えています。その結果、企業からの一方的なアプローチを行うだけでは、顧客の定着につながりにくくなっています。
このような環境のなかで、自社商品・サービスを継続的に購入してくれるロイヤルカスタマー(※)を増やしていくには、“ファンマーケティング”を取り入れることが有効です。
企業のマーケティング部門においては、「ファンマーケティングを取り入れるとどのようなメリットがあるのか」「事例を参考にして施策を検討したい」などと考えている方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ファンマーケティングが重要とされる理由や取り組むメリット、事例について解説します。
※ロイヤルカスタマーとは、長期間にわたり複数回商品を購入してくれる、売り上げ貢献度の高い顧客のこと。
目次[非表示]
- 1.ファンマーケティングとは
- 1.1.ファンマーケティングとは
- 1.2.ファンマーケティングが重要とされている理由
- 2.顧客の定着を促進するファンマーケティングのメリット
- 2.1.LTVの向上
- 2.2.顧客体験価値(CX)の向上
- 2.3.良質な口コミによる新規顧客の獲得
- 2.4.フィードバックの獲得
- 3.ファンマーケティングの注意点
- 4.ファンマーケティングの手法・取り組み事例
- 4.1.会員コミュニティ(ファンコミュニティ)サイトの運用
- 4.2. DM(ダイレクトメール)の送付
- 4.3.SNSでの情報発信・交流
- 4.4.ファンミーティングの実施
- 4.5.モニター参加
- 5. まとめ
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングはどのようなマーケティング手法なのか、なぜ重要なのかを解説します。
ファンマーケティングとは
ファンマーケティングとは、企業・商品・ブランドなどに対して愛着や信頼を持つファンを増やして、中長期的に売上を確保していくマーケティング手法です。熱狂的なファンは他の企業や商品に気移りすることなく、常に良い影響をもたらしてくれることが期待できます。
ファンマーケティングが重要とされている理由
ファンマーケティングが重要とされる理由には、次の2つが挙げられます。
- 消費者の購買行動・価値観の変化
- 消費者行動・意見の社会的影響力の高まり
近年、従来の“モノを所有することを幸せ”とする画一的な価値観ではなく、自身の消費行動を他者に共有したり、社会的な課題に貢献することに価値を感じたりする消費活動が見られています。
また、若者を中心にSNSが普及したことも大きな要因の一つです。SNSや口コミサイトなどでの情報収集・発信が気軽にできるようになったことで、消費者の声が企業のビジネスにも影響するようになっています。商品の購入前に情報収集をする消費者が多くなっており、企業からの情報だけでなく、実際に商品購入や体験をした人やインフルエンサーによるSNS上の情報が購買行動に影響しています。
このような環境において、企業が一方的なアプローチを行うだけでは、消費者のニーズ・価値観に対応できず、新規顧客を獲得することが難しくなります。
安定した売上を確保していくには、顧客との双方向・共創的なコミュニケーションを通して良好な関係性を構築して、ロイヤルカスタマーへと育成していくことが重要です。
商品・ブランドへの愛着や信頼を醸成するファンマーケティングは、ロイヤルカスタマーの育成・獲得に有効な施策といえます。
なお、近年注目されるエコマーケティングについては、こちらの記事で解説しています。
顧客の定着を促進するファンマーケティングのメリット
企業がファンマーケティングに取り組むと、顧客の定着化が進み、安定した売上につながることが期待できます。
LTVの向上
LTV(顧客生涯価値)とは、企業が1人の顧客から得られる総利益のことです。
ファンマーケティングに取り組み、商品に愛着・信頼を持つファンが増えると、リピート購入や継続契約につながることが期待できます。リピート購入や継続契約によってLTVが向上すれば、売上の拡大・安定化にもつながります。
なお、LTVを向上させるポイントや手段については、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
顧客体験価値(CX)の向上
顧客体験価値とは、商品・サービスの認知から比較検討、購入、使用、アフターフォローなどに至るまでに得られる顧客の体験のことです。
ファンマーケティングを通して、商品・サービスそのものの価値だけでなく、顧客に共感・信頼・感動・特別感などの付加価値を提供することで、顧客体験価値を高められます。
その結果、満足度の向上やブランディングにつながり、競合他社との差別化を実現できることが期待できます。
良質な口コミによる新規顧客の獲得
ファンマーケティングに取り組み、自社に愛着を持つファンを増やすと、企業や商品に対するよい口コミが積極的に投稿されることが期待できます。
SNSや口コミサイトなどでファンの口コミが拡散されると、それを見た消費者の興味関心が高まったり、信頼が醸成されたりして、商品購入につながる可能性があります。
フィードバックの獲得
自社商品・サービスのファンとなってくれた顧客とのつながりを維持することで、フィードバックを得られるようになります。
これまで企業だけでは気がつかなかった新たな意見や感想などを収集して、ファンの声を基に商品・サービスの改善を図ることで、新たなファンの育成につながると期待できます。
ファンマーケティングの注意点
ファンマーケティングを実践する際は、以下の二つの点に注意して取り組むことが大切です。
ファンの育成に時間がかかる(一朝一夕では出来ない)
ファンマーケティングは実践してすぐに成果が得られるものではなく、継続的な施策によりファンを育成していくものです。ただ単に企業・商品・ブランドの魅力を伝えるだけでなく、顧客との密接なコミュニケーション、顧客の声に耳を傾ける、ファン同士の交流の場を提供するなど時間をかけてさまざまな施策を行うことで、長期的な関係を構築することができます。
このようにファンマーケティングは一朝一夕でできる戦略ではなく、長期的かつ継続的な取り組みとなるため、成果を実感できるまで時間と忍耐、工夫が必要なことを心得ておきましょう。
コアなファンだけの集まりにならないようにする
ファンマーケティングによりコアなファンを育成することはさまざまなメリットにつながりますが、一方でコアなファンによる閉鎖的なコミュニティが構築されてしまい、新規ユーザーの獲得に影響がでるという懸念点もあります。
ファン同士のコミュニケーションの場は、ファンの固定化やファン層の広がりにつながります。コアなファンだけの集まりにならないよう、企業がコミュニティスペースにおいてかじ取りを行う、コミュニティ内のルールを設定するなどの工夫が必要です。交流しやすい仕組みづくりを行うことで、ライトな新規ユーザーがコミュニティに参加し、そこからファンへと育てることができるでしょう。
ファンマーケティングの手法・取り組み事例
ファンマーケティングに取り組む際は、企業と消費者または消費者同士が双方向のコミュニケーションを取れる場を設けたり、消費者の声を収集できる仕組みを整えたりすることがポイントです。
会員コミュニティ(ファンコミュニティ)サイトの運用
経済産業省の調査による菓子の製造・販売を行う企業の事例です。この企業では、消費者のロイヤリティ向上や消費者意見の収集を目的に、公式ホームページ上に会員コミュニティサイトを運用しています。
以下のような機能を設けることで、消費者のリアルな声を収集して商品改善・新商品開発に役立てたり、企業と消費者・消費者同士の交流を促したりしています。
▼会員コミュニティサイトの機能
- 消費者によるコメントや画像の投稿・共有
- 商品に関する消費者の投稿機能
- 企業によるキャンペーン情報・裏話の発信
出典:経済産業省『消費者・事業者間の円滑なコミュニケーション等 に関する調査報告書』
DM(ダイレクトメール)の送付
紙施策を用いることも、ファン化の手段として有効です。時期によって売上の増減が大きい有限会社 中村かまぼこ店では、潜在顧客を対象にDM送付することで、売上に貢献する優良顧客を獲得しています。
▼課題
おせち料理を彩る重要な食材として、毎年末には受注が多くなりますが、その時期以外は売上が伸びないことが課題でした。
▼実施したこと
日常的な食卓やアウトドアなどでもかまぼこを楽しんでもらえるように、一人ひとりに向けてDMでメッセージを届けました
▼効果
お客様ごとにDMオモテ面のキャッチコピー(画像内黄色下線が引かれている部分)やメッセージ内容をカスタマイズしたり、ウラ面でおいしく食べられるレシピを公開することで、中村かまぼこ店をもっと好きになってもらえるようなDMとなりました。また、掲載したQRコードの読み取りが増加し、Web遷移やかまぼこ購入増加にも繋がっています。
詳しくは、こちらをご確認ください。
SNSでの情報発信・交流
SNSはファンと直接やりとりができるコミュニティの場の一つです。キャンペーン情報等を一方的に発信するだけでなく、ファンやユーザーが投稿したものに対して反応したりコメントを返したりすることでよりファンと密に交流することができます。
また、ファンとコミュニケーションをとることは関係構築だけでなく、ファンの視点から見た意見を取り入れることができます。
SNSによるファンマーケティングの成功事例として挙げられるのがドミノ・ピザです。ドミノ・ピザやFacebookやInstagram、TikTokでファンと積極的に交流しています。特にTikTokでは40万以上のいいねを獲得している「バズ動画」もあり、人気インフルエンサーの起用などによって商品認知やファンの獲得、売上向上につなげています。
参考:【公式】ドミノ・ピザ (@dominos_jp) オフィシャルTikTok
ファンミーティングの実施
ファンミーティングは、ファン同士はもちろん、企業とファンの交流の場でもあります。ファンミーティングというファンが特別感を得られるようなイベントを開催することで、ファンとより密接な関係を構築することができ、良質なフィードバックも得られる機会です。
コスメブランドのマナラ化粧品では、ファンと直接交流できるイベントやオンラインイベントを開催しています。通販事業のため顧客と直接会う機会がないからこそ、ファンとのコミュニケーションの場を積極的に活用してコアファンの醸成につなげています。
参考:MANARA with
モニター参加
新商品やサービスなどを体験してくれるユーザーを募集し、モニターとして参加してもらうことで「商品開発に協力した」という愛着が生まれる効果が期待できます。
また、そこで得た声を実際に商品へ反映することで、よりユーザーの満足度の高い商品開発につなげることができるでしょう。
ワークマンでは公式アンバサダー制度を採用しており、ワークマン製品の情報発信を行うユーザーをアンバサダーとして認定し、新製品の発表会や新製品のモニター参加を依頼しています。商品のファンがモニターとなっているため、PR案件よりも口コミに信頼感があり、ファン層へのリーチが拡大する効果が出ています。
参考:WORKMAN公式アンバサダーご紹介
まとめ
この記事では、ファンマーケティングについて以下の内容を解説しました。
- ファンマーケティングが重要とされる理由
- ファンマーケティングに取り組むメリット
- ファンマーケティングの取り組み事例
ファンマーケティングに取り組むと、企業・商品・ブランドなどに対して愛着や信頼を持つファンを増やすことにつながります。
その結果、LTVの向上や顧客体験価値の向上、新規顧客の獲得、フィードバックの獲得などのさまざまなメリットが期待できます。
ファンマーケティングの取り組みはさまざまですが、なかでも紙媒体のDMはリアルならではの温かみのあるコミュニケーションができるため、顧客接点の質を高めることが可能です。
また、パーソナライズ施策によって訴求効果が高まり顧客のファン化につながります。
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なお、マーケティング戦略に不可欠なターゲティングについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
マーケティング戦略に不可欠なターゲティング! フレームワークを活用した設定方法