パーソナライズドマーケティングとは?一人ひとりの体験価値を高める方法
スマートフォンやSNSが普及して、商品・サービスの購買活動がオンラインの場へと広がっている今、顧客の購買行動と接点は多様化・複雑化しています。
▼BtoC-ECにおける市場規模の推移
画像引用元:経済産業省『令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書』
数あるモノや情報のなかから自社の商品・サービスに興味を持ってもらうには、すべての人に画一的なアプローチを行うのではなく、一人ひとりに合わせたマーケティング戦略を打ち出すことが重要です。
そこで注目されているのが、パーソナライズドマーケティングです。このマーケティング施策を取り入れることで、顧客接点での体験価値を高めて興味関心の醸成や信頼関係の構築などにつながると期待できます。
出典:経済産業省『令和4年度 電子商取引に関する市場調査報告書』
目次[非表示]
- 1.一人ひとりに寄り添ったパーソナライズドマーケティングとは
- 1.1.パーソナライズとは
- 1.2.パーソナライズドマーケティングとは
- 1.3.パーソナライズドマーケティングが注目される背景
- 1.4.パーソナライズとカスタマイズの違い
- 2.パーソナライズドマーケティングによって期待できる効果
- 2.1.コンバージョン率(CVR)のアップ
- 2.2.潜在顧客の獲得
- 2.3.顧客ロイヤルティの向上
- 2.4.LTV(顧客生涯価値)の向上
- 3.パーソナライズドマーケティングを使ったアプローチ手法
- 3.1.① WEB広告の配信[
- 3.2.②SNSでの広告配信
- 3.3.③DM(ダイレクトメール)の送付
- 3.4.④メールマーケティング
- 3.5.⑤ECサイトでのレコメンドの実施
- 3.6.⑥同梱物の送付
- 4.パーソナライズドマーケティングの注意点
- 5.まとめ
一人ひとりに寄り添ったパーソナライズドマーケティングとは
パーソナライズとは
そもそもパーソナライズとは、「一人ひとりに合わせて変更・調整する」という意味を持ちます。すべての顧客に同じサービスやコンテンツを提供するのではなく、収集した顧客データに基づいて分析し、一人ひとりに合わせた最適な情報やサービスを提供します。
パーソナライズドマーケティングとは
パーソナライズドマーケティングとは、顧客の属性・趣味嗜好・行動履歴などの情報に基づいて、最適化された体験を提供するマーケティング手法のことです。
パーソナライズではマーケティング活動を効率的に進めるために、個人ごとに異なる内容の広告等でアプローチを行います。
例えば、過去の購買履歴に応じてDMを最適化したり、顧客の悩みに応じておすすめする情報やサービスの内容を変えたりすることがパーソナライズの一例として挙げられます。
このように一人ひとりのニーズに合わせたアプローチを行うことで、ユーザビリティ向上や購買行動の促進につなげることが可能です。マーケティングの分野においてビジネスを成功に導く重要な施策であり、多様化する顧客のニーズに応えるために欠かせないマーケティング手法です。
パーソナライズドマーケティングが注目される背景
なぜマーケティング業界で「パーソナライズ」が注目されているのでしょうか。パーソナライズドマーケティングが進展した背景についてご紹介します。
▼パーソナライズ化された顧客体験の概要
画像引用元:経済産業省『令和3年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(小売業に係る国際動向等調査)』
従来では、テレビCMや新聞広告などの不特定多数に向けて画一的なアプローチを行うマスマーケティングが主流とされていました。
近年、スマートフォンやSNSが普及して購買活動の場がオンラインに広がったことにより、顧客の購買行動・接点が多様化しています。また、消費スタイルがモノ消費からコト・トキ・イミ消費に変わり、顧客の価値観にも変化が見られています。
このような背景から、従来の画一的なアプローチでは顧客との接点を創出したり、興味関心を高めたりといった効果を得ることが難しくなっています。
顧客に商品・サービスを知ってもらい、興味関心を高めて購買へとつなげるには、一人ひとりに合わせた方法・内容・タイミングでアプローチを行い、顧客体験価値の向上を図ることが重要です。
パーソナライズとカスタマイズの違い
パーソナライズと混同しやすい言葉に「カスタマイズ」があります。どちらも最適な顧客体験を提供するためのアプローチ手法ですが、この2つには明確な違いがあります。
パーソナライズは、企業側が顧客の情報に基づいて最適な商品やサービスを提供するのに対して、カスタマイズは顧客が自分で既存の商品やサービスに変更を加え、最適な形にすることです。
つまり、パーソナライズは「企業側」が設定するもの、カスタマイズは「顧客側」が設定するものという点で異なります。
なお、顧客一人ひとりにパーソナライズ化した施策で顧客とのコミュニケーションをとる“one to oneコミュニケーション”は、こちらの記事で解説しています。
パーソナライズドマーケティングによって期待できる効果
パーソナライズドマーケティングを実施することで、以下の効果が期待できます。
▼期待できる効果
-
コンバージョン率(CVR)のアップ
-
潜在顧客の獲得
- 顧客ロイヤルティの向上
- LTV(顧客生涯価値)の向上
それぞれ具体的にどのような効果が得られるのかを解説します。
コンバージョン率(CVR)のアップ
パーソナライズドマーケティングでは、顧客一人ひとりに合わせたアプローチを行うことによって、顧客の購買行動を促進することが可能です。顧客のニーズに寄り添った体験を、適切なタイミングで提供することで「資料請求」や「会員登録」といったCVまでの導線を作ることができます。
CVRの伸び悩みに悩んでいる場合は、パーソナライズ施策を導入することで離脱や購買意欲の低下を防ぎ、CVRのアップが期待できるでしょう。
潜在顧客の獲得
潜在顧客とは、自社商品やサービスをまだ知らない、もしくは具体的なニーズを認識できていない顧客のことです。パーソナライズドマーケティングでは、ユーザーのニーズに近い情報を提供できます。顧客が持っていない情報や、顧客自身が気づいていない潜在的なニーズに対してアプローチを行うことで、顧客側は自分のニーズに合った情報やコンテンツを見つけることが可能となり、結果的に潜在顧客の獲得につながります。
マーケティング活動において見込み顧客は顕在顧客だけでなく、潜在顧客も含まれます。すぐに結果が出るわけではありませんが、長期的な施策を行うことで潜在顧客を確度の高い見込み顧客へと育成し、最終的に企業の収益アップが期待できるでしょう。
顧客ロイヤルティの向上
顧客ロイヤルティとは、ただ商品やサービスを購入・利用するだけでなく、企業やブランドに対する信頼や愛着を持つことを指します。一人ひとりのニーズに合わせた情報を適切なタイミングで提供することで、企業に対して良い印象や信頼を持ってもらいやすくなります。さらに満足度の高い体験を得られれば、同じ企業・ブランドの商品やサービスをリピートしたいと感じるようになり、顧客ロイヤルティの向上に結びつくと考えられます。
顧客にとって有益な情報を提供して継続的な接点を維持することで、長く愛着を持って企業やブランドに良い影響を与えてくれる「ファン化」にも期待できるでしょう。
LTV(顧客生涯価値)の向上
LTVとは、顧客が自社の商品やサービスを利用開始してから終了するまでで企業が獲得できる利益のことを指します。顧客全員がまったく同じ悩み・課題を抱えているわけではないため、LTVを向上させるには一人ひとりのニーズに合わせたアプローチが欠かせません。また、時期によっても顧客の悩みやニーズは変化します。顧客にとって満足度の高い体験を提供し続け、長期的な関係を構築することが重要です。
パーソナライズドマーケティングを継続的に行うことで顧客ロイヤルティが高まれば、リピート購入または継続契約などの定着化につながり、LTVの向上にも貢献することが期待できます。
パーソナライズドマーケティングを使ったアプローチ手法
パーソナライズドマーケティングのアプローチには、オフラインとオンラインの手法があります。2つの手法を組み合わせることで、多様化する購買行動・顧客接点を捉えて、一連の購買プロセスにおける体験価値を高められます。
① WEB広告の配信[
1つ目は、インターネット上で配信できるWEB広告で、検索エンジンやWEB上の各メディアの広告枠に自社商材の広告を配信する方法です。
ユーザーの属性、興味や関心を基に自社のターゲットとなるユーザーに向けてパーソナライズド広告を配信します。過去の閲覧履歴に基づく情報など、最適なタイミングで広告を配信することも可能です。パーソナライズされたWEB広告を配信することで、認知拡大や購買行動の促進の効果が期待できます。
▼WEB広告の配信例
- ユーザーの行動や関心対象によって最適化するパーソナライズド広告
- LinkedIn(リンクトイン)のダイナミック広告などを用いたアカウント・ベースド・マーケティング(ABM)
- リターゲティング広告
②SNSでの広告配信
2つ目は、SNSでユーザーが過去に検索・投稿・閲覧・コメント・リポスト(リツイート)した履歴に応じて、パーソナライズ化した内容の広告を優先的に表示する方法です。
商品・サービスのターゲットとするユーザーが興味を持ってくれそうな広告を配信することで、潜在層の認知拡大や購買行動の促進につながります。
▼SNSでの広告配信例
- 自社商品と関連するキーワードが含まれた検索・投稿をしたユーザーに広告を配信する
- 自社の業界や商材との親和性が高いアカウントをフォローしているユーザーに広告を配信する
- SNSに登録されている年齢や性別、地域、勤務先といったユーザー属性を基に対象のユーザーに配信する
③DM(ダイレクトメール)の送付
3つ目は、ECサイトや会員サイトなどから顧客の住所情報を取得して、パーソナライズ化されたDM(ダイレクトメール)を送付する方法です。
顧客の属性や購入履歴に基づいてDMで有益な情報を提供することで、信頼関係の構築、リピートの促進につながります。
また、紙媒体ならではの人と人とのリアルなコミュニケーションは、信頼や愛着が醸成されやすいことから、顧客ロイヤルティの向上にも結びつくと考えられます。
▼DMの送付例
- 会員登録をしている顧客の属性を基に、似た属性を持つ顧客に人気があるサービスの案内を送付する
- ECサイトで購入した商品の情報を基に、関連する新商品の情報を送付する
- バリアブル印刷による個人に合わせた内容の情報を送付する
④メールマーケティング
4つ目は、顧客の登録情報や過去の購入履歴などを基に、個々に合わせた内容のメールを配信する方法です。パーソナライズされたメールであれば、配信する内容やタイミングをターゲットに合わせて最適化できます。
顧客一人ひとりのメールの内容や配信のタイミングを柔軟に変更できるため、より効果的なマーケティング活動を実施することが可能です。
▼メールマーケティングの送付例
- 会員登録をしている顧客の属性を基に、似た属性を持つ顧客に興味・関心の高そうな商品情報を配信する
- 顧客の過去の購買履歴を基に、関連する新商品の情報やキャンペーン情報を配信する
- 商品ページを閲覧したユーザーに対してクーポンやキャンペーン情報を配信する
なお、同梱物の訴求力をアップするためのデザインについてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
⑤ECサイトでのレコメンドの実施
5つ目は、ECサイトでの閲覧・購入履歴や登録情報、類似しているユーザー属性の利用動向などを基にレコメンドを実施する方法です。
顧客一人ひとりの趣味嗜好に合わせた商品・サービスを表示することで、求める商品をすぐに選択できたり、比較検討がしやすくなったりして顧客体験の向上につながります。
▼ECサイトにおけるレコメンドの実施例
商品の検索ページで閲覧した商品とジャンルやテイストが同じ商品を表示する
商品の購入ページで、似ているユーザー属性が購入している別の商品を表示する
過去の購入履歴を基に類似する商品を検索ページで表示する
⑥同梱物の送付
6つ目は、通信販売で商品を配送する際に同梱物を送付する方法です。
顧客の属性や購入した商品を基に、一人ひとりに合わせた内容の同梱物を送付することで、既存顧客のリピート促進と定着化を図れます。
DMと同様に、同梱物の送付は顧客との直接的なコミュニケーションになるため、愛着や信頼の醸成につながりやすいと考えられます。
▼同梱物の送付例
- 購入した家具を配送する際にインテリアのコーディネート例を紹介するカタログを同梱する
- 初回購入した顧客に対してお礼の気持ちを伝える挨拶状を同梱する
- 購入した食品に関するアレンジレシピや詳細な栄養情報などをまとめたチラシを同梱する
- 顧客の住所に近い店舗で使える限定クーポンを同梱する
- バリアブル印刷による個人の購買データに合わせた内容を同梱して送付する(関心の高い情報を送る)
なお、同梱物の訴求力をアップするためのデザインについてはこちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
パーソナライズドマーケティングの注意点
従来のマスマーケティングと違い、パーソナライズドマーケティングでは顧客一人ひとりに目を向けることでより効率的なマーケティング活動が可能となります。しかし、近年では顧客の購買行動の変化や消費者ニーズの多様化、選択肢の増加に伴い、既存の方法だけでは限界が訪れているといえるでしょう。
スマートフォンやSNSの普及により、ユーザーが膨大な情報量のなかから自分の欲しい情報を積極的に取りに行く時代です。そのため、これまでのように商品を購入した顧客に対して「他の人はこれも購入しています」といったレコメンドでは目新しさがなく、「特別感」や「価値」の効果が薄れてきていると考えられます。
パーソナライズドマーケティングを行う際は、より個人に寄り添った施策が求められ、顧客一人ひとりのニーズに合わせた価値のある体験の提供が必要です。さらに、飽きがこないよう、提供する情報やサービスを常に進化させていくことが、顧客との長期的な関係を構築するポイントでしょう。
また、近年はデジタル化に伴うプライバシー保護の観点も重要視されています。2022年4月に施行された改正個人情報保護法において、パーソナライズド広告を表示させるためには本人の同意取得が必須になりました。同意が得られない場合にはパーソナライズド広告は配信できないため、十分な運用効果が得られない可能性があります。
プライバシー保護を遵守しながらパーソナライズドマーケティングを効果的に行うには、WEB広告だけでなくSNSの活用やDMの送付、動画マーケティングなど、さまざまなマーケティング手法を併用して効果を検証しましょう。
まとめ
この記事では、パーソナライズドマーケティングについて以下の内容を解説しました。
- パーソナライズドマーケティングの概要
- パーソナライズドマーケティングによって期待できる効果
- パーソナライズドマーケティングで体験価値を高めるアプローチ手法
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パーソナライズドマーケティングの注意点
パーソナライズドマーケティングを取り入れて、顧客情報に基づき一人ひとりに最適化された体験を提供することで、CVRのアップや潜在顧客の獲得、顧客ロイヤルティの向上、LTVの向上につながると期待できます。
顧客へのアプローチを行う際は、オンラインとオフラインの手法を組み合わせて、一連の購買プロセスにおける体験価値を高めることがポイントです。また、変動が激しい顧客ニーズに対応できるよう、常に改善・進化できるよう努めていく必要があります。数ある選択肢から選んでもらうには、人間味や温かみ、特別感を演出できる紙媒体の活用が効果的です
『AccurioDX』では、チラシやDMなどの紙媒体を用いた“1to1紙マーケティング”を一気通貫で支援しています。1to1マーケティングを行うことで顧客ごとの反応やニーズを把握することができるため、個々に対して適切なアプローチを実施することが可能です。顧客一人ひとりに寄り添ったリアルならではの温かみのあるコミュニケーションによって顧客の体験価値を高められます。
サービスに関する詳しい内容は、こちらの資料をご覧ください。