
医師に響く製薬営業の秘訣:デジタル×オフラインのハイブリッド戦略とは
製薬業界では、新薬の開発から市場投入までのスピードが非常に重要です。しかし、現実には医師と直接アポイントメントを取ることがますます難しくなっています。新薬の迅速な普及を実現するためには、医師への効果的な情報伝達が欠かせませんが、医師の忙しさやスケジュールの都合から、従来の対面営業が難航しています。
コロナ禍を経て、医師とMR(医薬情報担当者)が直接会う機会はこの5年間で減少傾向にあります。そのため、デジタル手段を駆使したマーケティングや、オフライン施策の効果的な活用が求められています。
この記事では、医師に響く製薬営業の秘訣について、デジタルとオフラインによるハイブリッド戦略のポイントを解説します。
目次[非表示]
- 1.製薬業界におけるMRの役割や現状
- 1.1.MRの基本的な役割とは
- 1.2.MRの現状と課題
- 2.医療分野で求められる情報の即時性と正確性
- 3.オフライン営業と組み合わせた「ハイブリッド戦略」
- 3.1.対面コミュニケーションの価値
- 3.2.オフライン活動との組み合わせ
- 4.ハイブリッド戦略を用いたケーススタディ
- 4.1.MR訪問成功率UP!
- 5.データ分析による施策効果測定
- 5.1.データ収集と分析の重要性
- 5.2.データ分析ツールの活用
- 6.まとめ
製薬業界におけるMRの役割や現状
製薬業界における医薬情報担当者(以下:MR)の役割は、医師や看護師、薬剤師を含む医療従事者に対して、医薬品及び医療機器に関する効果、使い方、副作用などの情報提供を行ったり、医療現場からの情報収集を行ったりして、製薬企業と医療現場の橋渡しをすることです。このセクションでは、MRの現状や課題について解説していきます。
MRの基本的な役割とは
厚生労働省が発信している職業情報提供サイト『jobtag』等によると、MRの仕事は大きく分けて3つあります。1つ目は、医療情報提供者の専門家として、病院や薬局を訪問し、自社の商品・サービスの特長や品質、有効性、副作用、使用上の注意といった医薬品の適正使用を促すための説明を行うことです。2つ目は、患者や医療環境をよく知る医療従事者の現場から要望や困りごとを含むアイデアを集め、新薬開発等に繋げることです。最後に3つ目は、各情報の伝達役として、素早くかつ的確に伝えることです。情報の伝え方としては、医学・薬学情報を提供するような講演会の開催や、医療関係者同士の情報ネットワーク構築などが挙げられます。このように、MRの役割は製薬業界において、非常に重要であり、医療の質の向上に寄与しています。
住友ファーマ株式会社 『すこやかコンパス』より許諾を得て引用
MRの現状と課題
近年、製薬業界ではMRを取り巻く環境が大きく変わりつつあります。MR認定センターが発行する『MR白書』によると、医薬品市場自体は年々微増し、概ね10兆円規模となっているものの、MR数は9年連続減少の一途を辿っていることが分かります。特にコロナ禍と呼ばれた2020年以降からの顕著な減少傾向は、従来の対面による訪問営業よりもデジタルツールを活用した情報提供が求められるようになり、人間からの置き換えが進みつつあることが要因と考えられます。一方で同誌によると、直接医療機関を訪問せず、電話やwebのみで業務を遂行する「オンラインMR」「e-MR」は22年度から23年度にかけてわずか14名の増加(前年比増加率3.5%)にとどまっており、MR数推移については依然足踏み状態です。つまり、MRはデジタルとオフラインの両方のチャネルを駆使して情報提供を行うハイブリッドなスキルセットが求められているのです。
AnswersNews『MR「5万人割れ」が浮き彫りにする現状』
(https://answers.ten-navi.com/pharmanews/26057/)
医療分野で求められる情報の即時性と正確性
MRが扱う「情報」には様々な特性があります。医薬産業政策研究所によると、患者一人一人の健康状態や治療経過を適正に把握し、必要に応じて医療機関と自治体等が連携するためには以下のような要素が担保されることが望ましいとされています。本セッションでは特に①即時性と②正確性について見ていきます。
医薬産業政策研究所『製薬企業が医療情報の利活用時に求める要素』
(https://www.jpma.or.jp/opir/news/072/h5uesb00000008oc-att/72_3.pdf)
即時性の重要性
上記でも「情報へのアクセス性向上」に示される通り、医療現場では、患者の命や健康状態に関わる決定を迅速に行うことが必要になります。そのため、MRには最新の医薬品情報を即時に提供する能力が求められます。現在は、ウェビナーやチャットボットなどデジタルツールの活用により、リアルタイムで情報を反映し、提供することも可能となっています。
特に、情報の即時性が求められる場面は「新薬上市 (承認された新薬の市場販売が開始されること)」のタイミングです。一早く医療機関における新薬使用承認有無を得るためには、大量のメールに埋もれ、通知に気付かれにくいデジタル施策よりも、オフライン施策が鍵を握ることになります。電話や訪問に加えて、紙DMを上市直後にお届けするダイレクトなマーケティングアプローチが効果的です。AccurioDXでは、即日全国配送が可能なスキームをご用意しておりますので、ぜひお問い合わせください!
正確性の重要性
医薬品情報の正確性は、医療の安全性と医療水準の標準化に直結します。誤った情報が提供されると、医療ミスや患者へのリスクが高まるため、MRは常に正確な情報を提供する責任があります。『MR実態調査2022報告書』によると、医師がMRとの面会価値の有無を決定づけるのは「簡潔に正確に適切な」情報提供ができるかどうかという観点でした。この資質は、医療現場での適切な意思決定を支援し、患者の安全を守るために欠かせません。
公益財団法人MR認定センター『MR実態調査2022報告書 Q17 MRに最低限必要と思う資質』(https://www.mre.or.jp/files/co/page/attachment221201/mre_info/Investigation/mr_survey_20230424-2.pdf )
オフライン営業と組み合わせた「ハイブリッド戦略」
対面コミュニケーションの価値
対面でのコミュニケーションは、信頼関係を築く上で非常に重要です。直接会って話すことで、医師や医療従事者との信頼関係を深めることができます。また、対面での説明は、デジタルでは伝わりにくいニュアンスや感情を伝えることができます。メールによる案内は埋もれてしまい、情報を見逃してしまう可能性もあるので、医師や医療従事者とのリアルな対話を通じて、彼らのニーズや課題を直接把握することで、より具体的で効果的な情報提供を行うことができます。
エムスリーデジタルコミュニケーションズ株式会社 独自調査『医療機関の声』
オフライン活動との組み合わせ
MRが実践できるオフライン(アナログマーケティング)活動には、医療機関への訪問に限らず、紙パンフレットの活用や同梱冊子の作成、イベント案内の送付等の様々な選択肢があります。MRと医師のデジタルプラットフォーム上で提供した情報のフォローアップとして、オフラインでの対話を行うことで、医師の疑問や不安に直接対応できます。このように、デジタルとオフラインを組み合わせることで、より効果的な情報提供が可能となります。ハイブリッド戦略を実践することで、医師や医療従事者との長期的な信頼関係を強化し、医薬品の普及を促進することができるのです。
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ハイブリッド戦略を用いたケーススタディ
MR訪問成功率UP!
アポイントメントを取得しようとしてもなかなか医師にお会いできず、メールマガジンや紙DMによる医療情報の広告への反応も分からないため、どの施策に効果があるのか悩んでいたMRの課題を解決すべく立てられたモデルです。お客様である医師も専門性の違い等によって内容への興味の有無が異なったり、診療時間の関係でまとまった時間が取りにくかったりと課題を抱えていました。そこで、AccurioDXでは、各医療機関ごとに個別化したQRコード付きDMを医師に対して送付することで、アクセス検知のあった医師にMRが電話やメールでアプローチを行い、業務を効率化させるマーケティング支援を実践しました。同じパンフレット内容でもどの医師に読まれているかが明確になることで、相手が事前に興味を示していた内容を準備してから訪問できるようになり、より双方にとって満足度の高いコミュニケーションを取れるようになったという事例です。
コニカミノルタ株式会社 『AccurioDX活動事例 (製薬業界)』(筆者作成)
データ分析による施策効果測定
ハイブリッド戦略の効果を最大化するためには、データ分析が不可欠です。このセクションでは、データ分析を活用した施策効果測定の方法について解説します。
データ収集と分析の重要性
デジタルツールを複合的に活用することで、医薬品情報の提供状況や医師を含む現場の反応をデータとして収集することができます。これにより、メール開封率や、紙DMのQRコード読み取り率、ウェビナー参加率、アンケート回答など様々な指標を通じて施策の効果を測定し、個々人に最適化した情報提供手段を活用することが可能になります。同時に、反応が見られなかった医師には、紙施策の数週間後にメールを使って追い連絡を実施することで反応率を向上させるといった戦略改善の手を打つことにも役立ちます。
データ分析ツールの活用
データ分析には、専用のツールを活用することが有効です。Google AnalyticsやCRM(顧客関係管理)システムなどを使用することで、適切にデータの収集管理を行い、施策効果を定量的に評価し、戦略の最適化を図ることが可能です。また、AIや機械学習を活用した高度な分析ツールを導入することで、より精緻な分析が可能となり、施策の精度を高めることにも繋がります。
↓紙施策の効果測定を担うQRコード分析の詳細は以下のサイトをご覧ください!
まとめ
MRの役割は変わりつつあるものの、対面での信頼関係構築やリアルタイムでの情報提供が引き続き重要であり、デジタルとオフラインを組み合わせたハイブリッド戦略は、製薬営業において非常に効果的です。デジタルツールを活用することで、情報の即時性と正確性を確保しつつ、オフラインでのフォローアップを行うことで、医療従事者との信頼関係をより強化することができます。
『AccurioDX』では、チラシやDMなどの紙媒体を用いた“1to1紙マーケティング”を一気通貫で支援しています。お客様が蓄積しているデータを掛け合わせることで、オンラインでもオフラインでも情報を伝えたい相手の反応やニーズを把握することができるため、個々に対して適切なアプローチを実施することが可能です。顧客一人ひとりに寄り添った、リアルならではの温かみのあるコミュニケーションによって、顧客の体験価値を高めることができます。
このように、医師に響く製薬営業は、ビジネスの成長を加速させる鍵となります。ぜひ、これらの戦略を取り入れて、お客様との関係をより深めていきましょう。製薬業界におけるハイブリッド戦略の詳細については、以下のページをご覧ください。