学生と企業の連携で創出されるビジネスアイデアとは
近年、大学と企業が協力する「産学連携授業」が増加し、学生は学術的知識を実践的に応用する機会が増えています。企業は新たな視点や斬新なアイデアを持つ学生と出会い、新規事業の創出や仲間づくりに繋がるメリットがあります。
本記事では、産学連携の最新動向とその背景、企業と学生が得られる具体的なメリット、実際に産学連携で生まれた革新的なビジネスアイデアについて『御茶の水美術専門学校様』との事例を交えて記事形式でご紹介します!
01 | 産学連携の最新動向とその背景 |
産学連携とは、大学や教育機関と企業が協力してプロジェクトを進めることで、社会課題の解決や新たなマーケット開拓を目指す取り組みのことを指します。少子高齢化やグローバル化の進展に伴い、企業単独では対応が難しい課題が増えています。大学から研究成果や専門的な知見を、企業からは事業化や資金・設備といったリソースを提供し、強みを組み合わせることで、社会が求めるソリューションを迅速に生み出す動きが活発化しているのです。これにより、企業は潜在的なお客様層の認知を含めた新たなビジネスチャンスを得ることができ、大学は研究成果を社会に還元することが可能となります。文部科学省の調査(令和4年度実績)によれば、産学連携に活用される民間企業からの研究費受入額は年々増加しており、実施件数も微増していることが読み取れます。
文部科学省 科学技術・学術政策局産学連携・地域振興課 『1-2-1(1)民間企業との共同研究の実施件数及び研究費受入額の推移」『大学等における産学連携等実施状況について 令和4年度実績』
(https://www.mext.go.jp/content/20240731-mxt_sanchi02-000033979_1-01-2.pdf)
02 | 産学連携から得られるメリット |
学生がプロジェクトに参加することで、社員として日頃無意識にこれは厳しそう…と避けがちだった観点から意見が飛ぶこともあり、互いに学び合いの風土が醸成されることが挙げられます。産学連携案件では、費用感を含めたビジネスモデルとして成り立つか否かも勿論考慮すべきではあるものの、テーマを与える企業として見るべきポイントは「学生が『何故』その提案をするに至ったのか」という課題提起の部分です。社内外から組織活動の目的やゴール像に賛同する人材が集まるため、お客様に実際に喜んでいただくために自分たちがすべきことを考え、自然と同じ軸を持ってコミュニケーションを取ることができるようになっていくことを肌で実感できるでしょう。
加えて、なかなか社外へ足を運ぶ機会が少なく、他者とアイデアを共有することが難しいと感じる社員に対しても学生との関わりはおすすめです。インターンシップや、産学連携授業といったカジュアルな雰囲気の場から、仕事のやりがいや楽しさ、活動意義を今一度見出すことに繋がります。
AccurioDXチームでは、学生と一緒に「本気の寄り添い力」やチームビルディングを軸とした5daysインターンシップを開催しておりますので、是非そちらのブログ記事も合わせてお読みください!
03 | 学生が産学連携を通じて得る実践的スキル |
大学等の教育機関では理論や基礎を学ぶことが多いですが、実際のビジネス現場は複雑な課題が山積みです。例えば、1度のヒアリングで企画のベースとなる情報を得ることが挙げられます。初めて出会うお客様に対して、学生たちは自ら①誰に、②何のために、③どんなことを聞くべきか、考える必要があります。その後、実施したヒアリング内容を整理することで振り返り、聞ききれなかったことやヒアリング相手の潜在的な想いを洗い出す振り返りを行っていく、のようにPDCAサイクルを短期間/各プロセスで回す必要があるのです。
学生は産学連携を通じて、常に目的を持って行動する力を身に付けられるようになります。
社会人基礎力と称されるタイムスケジューリングや、プロジェクトリーダーとしての進捗確認、パートナーである企業との細やかな連携を担う渉外といった様々な役割を「百聞は一見に如かず」の視点で、学生の間に複数経験することができます。これらは、座学のみでは得られないものであり、さらにネットワークの構築は就職活動に留まらず、将来的な資産となります。グループ活動における自身のポジション把握や、得意/不得手なことの判別に寄与し、本当にやりたいことを探すというキャリア教育の面でも学生にとって良い影響をもたらすでしょう。
04 | 事例紹介 -産学連携で生まれる革新的ビジネスアイデア- |
弊社プロフェッショナルプリント部 PPHマーケティング統括部 ビジネス開発部 (以下:AccurioDX)では、2024年9月~11月に第1回、2024年12月~2025年1月に第2回の計2回、御茶の水美術専門学校の皆様と一緒に産学連携案件に取り組みました。
【産学連携テーマ】
コニカミノルタはAccurioDXという「チラシやDMなどの紙媒体のマーケティング施策における企画から施策実行、 効果測定まで一気通貫で支援する」1to1紙マーケティングサービスを提供しています。
当社のサービス担当者になった つもりで、「大学・学校法人、塾・通信教育向け」AccurioDXのマーケティングプランを提案してください。
テーマに沿って施策を考え出す前段階の準備として、アナログ印刷とデジタル印刷の違いや、AccurioDXが普段どんなことを行っているのか、何のために新規事業として活動しているのか、職場の雰囲気等、学生の皆さんとAccurioDXメンバー同士でざっくばらんに対話し合い、弊社のデジタル印刷機及び制作物におけるデモも見学。『ヒアリングに行く前は難しい課題だと感じたが、訪問後は案外身近な課題だということに気付き、気が楽になった』という受講学生の感想からも汲み取れるように、テーマを自分ごと化して、各々AccurioDXへ共感し、働く社員と同じ目線に近づくことを体感していただきました。
学生たちが各自の制作物前でプレゼンテーションを行い、私たちAccurioDXメンバーが講評を述べる形で成果発表会が開催されました。特に第2回目の2025年1月24日(金)は、弊社プロフェッショナルプリント事業本部長である植村利隆さんにもご参加いただき、新たなデジタル印刷活用方法の選択肢について、各々の知識・経験を交えて、相互に意見交換を行うことができました!
以下に、コニカミノルタ企業奨励賞を獲得した2作品をご紹介します。
Case | 01 |
コロナ禍で高校に入学した学生たちならではの、実際に目の前に人がいる状態で話しかける初対面コミュニケーションの壁の厚さを「1枚のカード」とレクリエーションイベントで緩和させるというアイデア。カードには、利用者ごとに自身で選択した好きなアイコン画像と個別QRコードが付与されており、互いのQRを読み取ることで氏名や趣味を記載した自己紹介ページに遷移する仕組みです。
心理的安全性(ラポール)の観点からも、不安が減らされると信頼関係を築きやすいとされ、カードを通じて話題や共通項を見付けられるとスムーズな交流に繋がり、新入生が学校に馴染みやすくなるという結論は説得力がありました。
また、ペルソナを新入生や教員といったサービスのエンドユーザーと分けて、学校を友人関係が上手くいかず退学してしまう生徒が居るという課題を抱えた「校長」に置いており、私たちがお題としている教育業界のマーケティング施策導入有無を判断する意思決定者としている点が秀逸でした。
Case | 02 |
近年カメラマンの減少や、教師の働き方改革が進み、縮小傾向にある卒業アルバム。学校に通った思い出としても「卒アルは残したい」派の彼女が考案したのは、節目節目で自身の人生を振り返られるような意義をキャリア教育の一環として付加し、個々に異なる写真を掲載したパーソナライズアルバムを学生自らの手で作っていくことでした。
体育祭や文化祭といった行事後に振り返りを行い、リレー1位などの目に見える成果に限らず、準備活動段階から各人がどんなことに貢献出来たかを考えた上で、グループワークとしてメンバー同士でその人にぴったりの写真を選びます。写真の選定基準は映りの良さではなく、自分が『その場に居た』という見落としがちな事実とともに輝いている瞬間を切り取ったもの。学生が選ぶことで、写真枚数を含むクレーム対応や選定作業に追われる教員負担が減ることも特長的でした。アルバムを見ながら自らの歩みを振り返り、それを起点に得意分野を見出し、キャリア選択に繋げていくというストーリーが特に面白かったです。
さらに、AccurioDXらしい紙を活用としたコミュニケーションを彼女なりの実体験を踏まえて定義したり、学校側へのメリットとして何故施策を導入してくれるのかという視点から考察を入れたりと、初めて提案を聞く人でも想像しやすく共感を得やすいと感じる発表でした。
上記2作品以外にも、文化祭用集客ポスターや、学内アンケート、大学生の食生活改善、幼稚園におけるお便り、就職活動に臨むためのトライアウト、運動部指導、学習塾向けの受験生応援施策といった様々な場面での紙活用方法をご提案いただきました!
このような販促施策を導入してみたいとご検討の際には、是非1度AccurioDXまでお気軽にお問い合わせくださいませ。
御茶の水美術専門学校の皆様よりお寄せいただいた感想や、弊社メンバーからのコメントを抜粋して掲載しております。
ビジネスを考え広めていく上で、避けては通れない「何故自分たちがやるべきなのか」や、施策の魅力でもある「オリジナリティ」の出し方を含めて、双方様々な学びがありました。
この度は貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました!
今回のプレゼンを通じて、サービスを考える際に「コニカミノルタである意味」を追求する難しさを実感しました。
企業の強みを活かしつつ独自性を持たせることの重要性を学ぶ貴重な機会となりました。
(デザイン・アート科2年 学生)
難しいテーマでしたが、最後まで考え抜いたことで新たな視点から物事を見ることができました。この活動を通して思考力が身についた気がします。(デザイン・アート科2年 学生)
企画を進めるにあたり、途中経過のフィードバックをいただけたことがとても力になりました。その成果を評価していただけて嬉しかったです。(デザイン・アート科2年 学生)
学校関係者とのつながりをターゲットにするという点で難しさを感じるとともに、技術の理解にも苦戦しましたが、大変やりがいのある経験となりました。(デザイン・アート科2年 学生)
与件にあった「サービス担当者」として実践さながらのマーケティングプランの立案当初、アイデアに滞る場面では不安でしたが、学生ならではの視点で最後には各々が充実した内容に仕上げてきました。切磋琢磨しながら企画を生み出すという貴重な経験を今後に生かしてほしいです。(2年担任 教員)
最近の若者トレンドや、直近の実体験に基づいたアイデアが多く、会社に籠っていては気づかない視点を知れて貴重な経験でした。(AccurioDX参加メンバー)
産学連携は、学生の新鮮なアイデアが企業に刺激を与えて、お互いにとってすごくいい取り組みだと思います。今回のプロジェクトでは、学生たちが名刺型カードや卒業アルバムの新しい使い方を提案して、企業側としても新しい発見がありました。今後もこのようなコラボで、もっと面白いアイデアが生まれることを期待します!(弊社参加メンバー)
05 | まとめ |
産学連携の重要性は今後ますます高まることでしょう。両者の連携によって生まれる新しいビジネスアイデアは、企業の競争力を一層高めるだけでなく、社会全体のイノベーションを加速させます。学生目線でのヒアリングや提案内容は、実体験等を絡めた身近な課題や感情に即しているからこそ、企業側が業界・マネタイズ知識等の理論・経験を組み込むことで、ブラッシュアップ案が革新的かつ実現可能性が高いビジネスモデルとなり得る可能性があります。
また、学生にとっても産学連携は非常に貴重な学びの場となります。実際のビジネス現場での経験を通じて、学生は理論と実践を結びつける力を養い、授業への意欲の高まりが期待できます。また、企業とのネットワーキングを通じて、自分の好きなことや将来の夢を見つけるきっかけにもなるでしょう。産学連携は、学生の成長を大いに促進し、社会に出てからの即戦力育成としての役割を果たします。
その他の『AccurioDX』産学連携事例については、是非こちらのページをご覧ください。産学連携による新しい価値創造の面白さや、ビジネス成長を加速させるための具体的な方法を見付けていただけます♪
執筆者より一言
私が大学3年生の時に学生の立場で産学連携授業を受講していた際には、お客様(施策導入決定者ではなく、エンドユーザー)は誰なのか、どうすれば使いやすいサービスとなり喜んでもらえるのかを精一杯考えて提案資料を作成した記憶があり、まさにBtoBの世界で学生が1番陥りやすいしくじりをしていたなと思い出しました(笑)
私と同じしくじりの道を通ることなく…!と、御茶の水美術専門学校の学生の皆さんには「ビジネスモデルの登場人物それぞれのメリット」も考えてみてほしいというフィードバックを早めの段階で送らせていただきましたが、実際にそれを考えて提案の場に持ってくるのは容易ではなかっただろうと思いますし、特に1人では行き詰ってしまいがちです。AccurioDXも同様に、チームだからこそ自分の見落としがちな穴にも気が付けるので、本案件を通じて、自身のコミュニティ内外に知っている人を増やすことが大事だなと改めて感じました!