
▲左から、赤木 萌恵 様、諏訪 春哉 様、坂牧 悟 様(株式会社キングジム 経営企画部 新規事業推進課)
経営企画部 新規事業推進課
課長 坂牧 悟 様
経営企画部 新規事業推進課
諏訪 春哉 様
経営企画部 新規事業推進課
赤木 萌恵 様
企業名 | 株式会社キングジム |
|---|---|
所在地 | 東京都千代田区東神田二丁目10番18号 |
創業 | 1927年 |
従業員数 | 連結:1,738名 個別:366名(2025年6月現在) |
Web |

1927年の創業以来、事務用品のスタンダードを確立してきた株式会社キングジム。経営理念にもなっている「独創的な商品開発」を強みとする同社では、オフィスの定番「キングファイル」や、ラベリング文化の礎を築いたラベルライター「テプラ」など、既存の枠組みに捉われない多彩な商品を世に送り出してきた。
しかし、オフィスや家庭で愛用されている主力商品を含む同社の事業は今、大きな転換期を迎えている。その背景にあるのが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に加速したワークライフスタイルの変化だ。
テレワークの普及やペーパーレス化の進展により、国内における事務用品全体の需要はゆるやかに減少傾向にある。特に「テプラ」の主要な用途のひとつがファイルの背表紙ラベル作成であるため、ファイルの利用減少とともに「テプラ」の需要も減少するという、構造的な課題が浮き彫りとなった。
こうした市場環境の変化を受け、従来の「モノづくり」に留まらない新規事業開発として、既存事業との親和性が高いサービス事業への進出を決断した。
「第11次中期経営計画でも『デザインとデジタルを活用した新サービスの創出』が掲げられ、キングジムで初となる新規事業開発の専任チームが設置されました。社内のさまざまなバックボーンをもった人材が参画し、ファイルと『テプラ』に次ぐ第三の柱をゼロから立ち上げています」(坂牧 様)
新規事業を開発するにあたり、欠かせない要素とされたのが「デザイン✕デジタルの活用」と「隣の土地(既存事業に近い領域)」の2点だった。さまざまな新規事業の候補が生まれ、精査される中で最終的に生まれたのが、印刷通販サービス『テプラボ』だ。

「『テプラボ』のコンセプトは、『テプラ』が長年大切にしてきた『誰でも簡単に、迷わず、きれいなラベルを作ることができる』という思想の延長線上にあります。デザイン面では、プロのデザイナーが製作したテンプレートを選んで、文字や画像を差し替えるだけで、簡単にデザインを完成させることができます。テンプレートの活用イメージを想起させるため、AIで生成したシーン画像(※)を豊富に準備しているのも特長です。
印刷仕様面では、膨大な印刷オプションの選択肢をあえて絞り、キングジムの『おすすめ仕様』を表示することで、ユーザーを迷わせない設計にしています。『選択肢を減らすことでユーザーの利便性を高める』という考えは、まさに『テプラ』ひいては『キングジム』ならではの発想といえます」(坂牧 様)
既存のテプラでは扱えなかったフルカラー・大判ステッカーだけでなく、コースター、ショップカード・名刺、ポストカード、チラシ、ポスター、床ステッカーといった多彩な印刷物を簡単に制作できる。メインターゲットは、こだわりを持って、店舗や商品を作っている中小規模の事業者だ。こだわりの商品を手掛けながらも、ラベルデザインや印刷まで手が回らないという悩みを解決するため、デザインから印刷・配送までをシームレスにつなぐサービスとなっている。
※シーン画像:各制作物のリアルな利用想定シーンの画像をAI生成したことを指す

未経験でも高クオリティのデザインを実現しつつ、一気通貫で印刷・配送までを完結できる印刷通販サービスを実現するため、デジタル担当として主にシステム設計を担っているのが、長年同社のデジタルインフラの保守・運用を担ってきたプロフェッショナル人材である諏訪様だ。『テプラボ』の企画が固まり、フロントエンドの開発が進む一方で大きな課題として持ち上がったのが、バックエンドのシステム構築だった。
自社に大規模な印刷設備はないため、複数の印刷会社に案件情報と印刷データを振り分けて転送する仕組みが必要となる。フロントエンドとバックエンドを接続するだけでなく、裏側で印刷体制とも連携しなければならない。さらに一般的なECサイトと比べ、印刷通販ECは印刷仕様の多様さや価格設定の細かさなど、その複雑さ故にゼロからシステムを構築することはハードルが高い。
そこで諏訪 様は、印刷物のオンライン受発注システムである「Web to Print」のパッケージで代替する方向を検討し始め、一般的なインターネット上の検索や展示会での情報収集だけでなく、積極的にAIを活用したリサーチを進めることで協力パートナーを比較検討し始めたという。
「弊社全体としてAI技術の活用にはかなり積極的です。市場リサーチ業務はまさにAIの得意分野ですから、システム構築の協力パートナー選定にはAIを活用しました。当初は『Web to Print』に関連した事例などを調べていたのですが、市場でよく見られるパッケージの多くは『印刷設備を持つ会社が、自社で印刷通販を始めるためのシステム』であり、印刷設備を持たない弊社には噛み合わないと分かったのです。
私たちが本当に必要としていたのは『Web to Print』のシステムではなく、複数の印刷パートナーさんへの発注を自動で分散させる『オーダー分散システム』であり、辿り着いた理想のパートナーがコニカミノルタさんでした」(諏訪 様)
「オーダー分散システム」を構築する協力パートナーに
同社が求めた要件は大きく以下の4つだった。
1. 信頼できる国内企業であること
2. 印刷事業に精通していること
3. 「オーダー分散システム」の提供実績があること
4. 親身なサポートが受けられること
「コニカミノルタさんは国内企業であるのはもちろん、
印刷会社さんのことを深く理解されている点が
とてもありがたいなと感じました。
『テプラボ』は、印刷会社さんがいなければ成り立たない
ビジネスモデルです。システム構築だけのサポートだけで
なく、印刷業界に精通したプロからの視点でアドバイス
いただけるのは、コニカミノルタさんだけでした」(坂牧 様)
初回問い合わせから契約締結まで約2か月、契約後はスケジュール通りに『オーダー分散システム』の導入が完了している。従来、印刷会社への発注は、受注内容をもとに発注書を作成し、メールで送信するというアナログな流れが一般的だった。「オーダー分散システム」を活用することで、『テプラボ』上ではユーザーが注文した情報が、指定された印刷条件に基づいて全国の印刷会社へ自動で送信され、発注まで完了する仕組みとなっている。
「『テプラボ』ユーザーの注文後、印刷会社さんに案件情報と印刷データを転送、発注する一連のフローに必要な人的工数はゼロです。少数体制で新規事業を推進する私たちにとって、発注業務を完全に自動化できたことは、限られたリソースをサービスの改善や顧客対応に集中させるためにも大きな意味を持っています」(赤木 様)


今回の取り組みは、「オーダー分散システム」の導入による自動発注フローの構築だけに留まらない。当初は、大手印刷会社一社に発注を集約するビジネスモデルも検討されていたが、新規事業としてビジネスモデルの柔軟さを確保すること、市場競争力のある価格設定を実現するためには、複数の印刷会社に分散して発注する仕組みが適していた。当時の状況を、坂牧 様は以下のように振り返る。
「印刷会社さんとコニカミノルタさんの『オーダー分散システム』、そして事業主である私たちが三位一体となって動けたことで、初めての印刷通販領域への挑戦でもサービスを形にすることができました。
特に印象に残っているのが、価格テーブルの構築です。用紙・加工・部数の組み合わせごとに膨大な行数になり、協力いただく印刷会社さんと一つひとつ要件を詰めていく作業は想像していたよりも大変でした。コニカミノルタの担当の方にアドバイスをいただきながら、一つひとつの仕様を固めていくプロセスは、印刷通販というビジネスを理解する上で貴重な経験となっています」(坂牧 様)
※『テプラボ』の印刷パートナーについて、キングジム様への直接のお問い合わせはお控えくださいますようお願い申し上げます。

『テプラボ』が踏み出す新規事業開発の一歩は、キングジム一社だけの範囲に留まらない。デザインとデジタルをかけ合わせたサービスで新しい市場と“表示ニーズ”を開拓し、パートナーである印刷会社に自動で発注が送られ、印刷後はシステム上で最適化された配送でユーザーの手元に価値ある印刷物が届く。同社が見据えるのは、事業の成長を通じた印刷パートナーとのWin-winな関係構築、そして共創である。
「リリースからまだ日が浅い『テプラボ』ですが、しっかり事業全体を大きくしていきながら、大切なパートナーである印刷会社さんにより多くのメリットを還元し、共に成長できる持続可能なサービスを目指していきます。
そのためにも『キングジム』というブランド力を活かすことはもちろん、新しいAI技術もしっかり活用していく予定です。ただ、手段の目的化には注意したいですね。あくまでユーザーの課題が先にあり、それを解決する手段としての技術があります。
ものづくりだけでなく、『テプラボ』というサービス開発においても、キングジムの文化である“独創性”を忘れず、『キングファイル』や『テプラ』のようにユーザーから長く愛されるサービスに発展させていきたいですね」(坂牧 様)
※掲載内容は取材当時の情報です。所属・役職などは現在と異なる場合があります。